読書記録

「ネパール王制解体」(小倉清子)

ネパール王制が解体された2006年の「4月革命」にいたるまでのうごき、とくに武装反政府勢力である「マオイスト」のうごきを丹念におったレポート。著者自身がネパールに住み、奥地山岳地帯のマオイストたちの拠点までみずから何度も足を運んで、党幹部だけで…

「うまい酒の科学」(酒類総合研究所)

酒造過程に興味があったのでお勉強。説明も平易だし写真もおおくてわかりやすい。唯一の欠点は読んでると飲みたくなること。やっぱり酒造っておもしろいなあ。趣味の酒造ってぜったいハマるとおもうんだけど。酒税法、断固粉砕。うまい酒の科学 造り方から楽…

「マグマの地球科学」(鎌田浩毅)

もともとおもしろい分野のうえに文章がすごくわかりやすい。これまであいまいだった知識が具体的なイメージをともなってちゃんと整理できた。あと印象的だったのは、20億円の研究プロジェクトで教科書が書きかわるような成果でているというくだり。たった20…

「少年アリス」(長野まゆみ)

秋に「改造版」がでるということで再読。さいしょに読んだのは10代のおわりごろ。まだ時計台の地下にあった大学生協の書籍部で文庫版を購入。白地に青だったころの河出文庫。じつのところ初期の作品のなかでは「少年アリス」の印象はうすくて、「夜啼く鳥は…

「電車の運転」(宇田賢吉)

元運転士による列車運行と鉄道技術の解説本なんだけど、これがものすごくおもしろい。とくに駅出発からつぎの駅の到着までを手順を追って記述したぶぶんがすばらしくて、運転士がそのときどきに何をしていて、何を気にしているかがよくわかる。乗客からみて…

「私を月に連れてって」(Edward Belbruno)

「ひてん」などの軌道を設計した数学者による自伝、解説本。これまで省エネルギー軌道といえば漠然とスイングバイによる加速というふうにイメージしていたのだけれど、その本質は、3体、4体問題下における引力がほぼつり合っている領域でのカオス的挙動であ…

「ゲゲゲの女房」(武良布枝)

水木しげるの奥さんの自伝。本人のことよりも夫のことばかり書いてるあたりが人となりをあらわしてる気がする。すさまじい貧乏話もある面しあわせそうにみえてしまう。 「私じゃない人と結婚してたら、どうだったのかなぁ」 以前、富士山の小屋に行ったとき…

「見てわかる DNA のしくみ」(工藤光子、中村桂子)

本よりも附属の DVD の方がメイン。とりあえず DVD の方だけしかみてないけど、ほんとうに素晴らしい出来。いっけん TV でよくある模式アニメーションとおなじようにみえるけど、TV でやっちゃうような安易な省略や模式化がなく、あくまでも現実の物質のうご…

「江戸城 ―本丸御殿と幕府政治」(深井雅海)

江戸城本丸御殿の構造が日々の政務や儀式でどのようにつかわれていたかというのを中心に、どのようなスタッフがどこでどんな役割をもっていたのかというのが概観できる。広大な御殿のほとんどが政庁や儀式用で、将軍が日常つかっている部分はあんがい狭いの…

「新しい物性物理」(伊達宗行)

基礎から最先端まで見通しよく概説していて、この分野に興味のある高校生とか学部1回生(夏休みまで)とかにはちょうどいいかんじ。そういう意味ではまさにブルーバックス。電子のバンドと磁気を構造、温度、圧力などであやつるのが物性だとおもってるんだけど…

「大人の科学マガジン Vol.17 テルミン」

とりあえずつくってみた。やっぱり調整がむずかしくてなかなか音が安定しない。アースと外部出力をつける改造をするとだいぶちがうらしいんだけど、それは休日のたのしみにとっておこう(部品もないし)。大人の科学マガジン Vol.17 ( テルミン ) (学研ムック…

「間取り相談室」(佐藤和歌子)

「間取りの手帖」の続編。前作ほどのインパクトはないけど、じわじわ効いてくる。カバー裏の相関図をみながら読み直すと味わい深い。いや、そうでもないか。間取り相談室作者: 佐藤和歌子出版社/メーカー: ぴあ発売日: 2005/03/18メディア: 単行本 クリック:…

『「世界征服」は可能か?』(岡田斗司夫)

評判どおり、3章まではまあまあ愉しめるんだけど、4章がすごくつまらない。一説ぶちたいっていうのが空回りして論理がついてきてない。ちなみにわたしは黒幕タイプ(苦笑)「世界征服」は可能か? (ちくまプリマー新書)作者: 岡田斗司夫出版社/メーカー: 筑摩書…

「ピクトさんの本」(内海慶一)

おもに警告系の人型ピクトグラムをあつめた本。表紙で衝動買い。愉しい。長文の解説がすべり気味なのはご愛敬。ピクトさんの本作者: 内海慶一出版社/メーカー: ビー・エヌ・エヌ新社発売日: 2007/04/20メディア: ペーパーバック購入: 6人 クリック: 128回こ…

「異体字の世界」(小池和夫)

まあ、つぎからつぎへといろんな字がでてきて、愉しいには愉しい。でももうちょっと「書体、字体をわたる」ことについての記述があればより教育的だったとおもうし、筆者がかかわった JIS 規格改定のうらばなしももっと読みたかった。タイトルどおりこれでも…

「勘定奉行荻原重秀の生涯」(村井淳志)

元禄の通貨改鋳を主導した勘定奉行の伝記。ハイライトは通貨改鋳の目的が、通説である金含有量の差分による幕府の収入増ではなく、本位貨幣から管理通貨制度への移行だったというところなんだけど、その意図をしめす直接証拠が本人の「貨幣は国家が造るもの…

「鉄道ひとつばなし2」(原武史)

「鉄道ひとつばなし」の続刊。かたひじはらないエッセイなので読みやすいけど、これがなんで講談社現代新書なのかは謎。鉄道マニアにたいする微妙なつっかかりはなんか近親憎悪っぽい(苦笑)鉄道ひとつばなし 2 (講談社現代新書)作者: 原武史出版社/メーカー:…

「江戸の妖怪事件簿」(田中聡)

江戸時代におきたとされる妖怪譚をあれこれあげながら、それを当時のひとびとがどうとらえてたかということを中心におっていく。著者の関心はその時代の「常識」のありようにむいているんだけど、よんでて面白かったのはべつのところ。当時において妖怪「事…

「超能力番組を10倍楽しむ本」(山本弘)

TV の超能力番組のインチキを指摘する本だけど、と学会系の本を読んでるひとならだいたい似たような話はしってるとおもうので、カバー折り返しにあるように啓蒙本としてつかうのがいいのかな。ビデオ映像とか現地取材を駆使して丁寧に調査されてて、本の質は…

「カメラのしくみ」(豊田堅次)

デジカメを購おうかなって気になったので、高林君がすすめてた本でちょっとお勉強。カメラのスペックってよくわからない指標がおおくて困惑してたんだけど、この本でやっと理解できた気がする。図解 カメラのしくみ (VISUAL ENGINEERING)作者: 豊田堅二出版…

「貂の家」(一條裕子)

妖術をつかって人間のような文化的生活をおくろうとする貂の一家のはなし。ってこんなまとめ方じゃわけがわかんないけど、じっさいに導入はさらりと強引で本気なんだか、寓話なんだか、ファンタジーなんだかよくわからない。よくわからないながらも、そこを…

「ジャニヲタ 女のケモノ道」(松本美香)

帯のアオリが『「30代」「独身」「ジャニヲタ」の三重苦』、……ってやかましいわ!内容はなんか、おもいあたる節ばっかりで苦笑。やっぱりみんなおなじような道をたどって大きくなるのね(謎)ジャニヲタ 女のケモノ道作者: 松本美香出版社/メーカー: 双葉社発売…

「ココロミくん2」(べつやくれい)

たこいいなあ。たこ。「怪物の花嫁」をおもいだした。ココロミくん2作者: べつやくれい出版社/メーカー: アスペクト発売日: 2007/04/25メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: 5人 クリック: 33回この商品を含むブログ (48件) を見るエド・ウッド・コレクシ…

「かたき討ち」(氏家幹人)

おなじ著者の「大江戸死体考」がおもしろかったので購入。期待どおりの良書。法や制度面を中心に記述するということで、心情面にはあまりふかいりせず、実際におきた出来事を資料から丁寧にあつめている。で、これがまたけっこうグロい話ばかりなんだけど、…

「検定絶対不合格教科書 古文」(田中貴子)

「教科書」のぶぶんはとてもおもしろい。既製の教科書は毒気がぬかれてて、肝腎なところは隠されてるしね。でも知ってる学生はちゃんと知ってて、「笑う大天使」ファンには光源氏は「増殖ワラジムシ」「性衝動人」「歩く煩悩様」だし、「稚児の空寝」がそー…

「大回転」(越智善彦)

朝だるくてゆっくりしてたら、運送屋さんゲット(笑)SBM から、はや幾星霜。収録されているシリーズ物の未完率の高さが(号泣)越智善彦アートワークス 大回転作者: 越智善彦出版社/メーカー: エンターブレイン発売日: 2007/04メディア: 大型本 クリック: 8回こ…

「不健全な精神だって健全な肉体に宿りたいのだ 3」(菅野彰)

なんだかどんどん体力勝負になっていってるけど、大丈夫なんだろうか。芦ノ湖も屋久島もいちばんしんどいところはほとんど文章に書かれてない*1のが逆にリアル。でもどっちかというと、体力勝負というよりは飲んだくれ放浪記なのかも。不健全な精神だって健…

『「国語」の近代史』(安田敏朗)

全体的にいわゆる左翼っぽい言説で、非難するつもりはないといいつつもかなり小うるさいので、現在の価値観をもって過去を断罪するのはフェアでないという批判もありうるかもしれない。が、どんなスタンスに立つにせよ、これだけの質量をもって総括すること…

「華族」(小田部雄次)

どんなひとがどんな理由で爵位をさずかり、各時代でどんな経済基盤をもち、どんな思想で、どんなことをして、社会に対してどんな影響をあたえたのかを丹念におった、まさに「通史」。けっして一様ではない華族たちを、多様さをたもったまま見通しよく、時代…

「美しく舞うためのフィギュアスケートレッスン」(山田満知子)

じぶんでやるんじゃなくて(笑)、競技をみるときの参考に。だいたいひとつの技術を見開き2ページで説明していて、最初は歩き方とか止まり方とかなんだけど、スピンのあたりから急に難易度があがってジャンプのあたりなんか激難。でも2ページ(苦笑)よんでたら…