「ネパール王制解体」(小倉清子)

ネパール王制が解体された2006年の「4月革命」にいたるまでのうごき、とくに武装反政府勢力である「マオイスト」のうごきを丹念におったレポート。

著者自身がネパールに住み、奥地山岳地帯のマオイストたちの拠点までみずから何度も足を運んで、党幹部だけでなく一般の党員そしてマオイストと対立するひとびとまで、さまざまなひとの生の声をあつめている。主にマオイストの活動を記録しているため王室や政府のうごきの詳細はわからないが(しかしあくまで著者の記述は中立)、肌で感じた民主化運動やそのなかでのひとびとの暮らしを知ることができる。

革命史というと一種の高揚感があるものだけど、ネパールの場合、武装闘争にたずさわり命を落とすのがマオイストも政府側(おもに警官)もどちらも貧しいひとびとで、本人だけでなく家族までリンチ同然で殺害されているという事実に暗澹とする。あのそれほど広くない国土で13,000人が命を落としている(総人口は2,900万人)わけで、そこにのこった憎悪をのりこえてあたらしい国をつくっていく道のりをおもうと気が重い。

ネパール王制解体―国王と民衆の確執が生んだマオイスト (NHKブックス)

ネパール王制解体―国王と民衆の確執が生んだマオイスト (NHKブックス)