「江戸の妖怪事件簿」(田中聡)

江戸時代におきたとされる妖怪譚をあれこれあげながら、それを当時のひとびとがどうとらえてたかということを中心におっていく。

著者の関心はその時代の「常識」のありようにむいているんだけど、よんでて面白かったのはべつのところ。当時において妖怪「事件」が「事実」である以上、それは法秩序にもとづいて行政機関によって裁定され、公文書に記録される(こともある)。どの機関がどのような法を根拠にして、いかなる手続きで事態に対処するのか。「怪異学の技法」でもとりあげられていたけど、こういった法制史からみた怪異というのがもっとあきらかになっていくと愉しいんだけど。

あと、幕末に黒船によってもたらされたコレラが、アメリカによって使役された狐による*1と風聞されていたというのは面白い。

江戸の妖怪事件簿 (集英社新書)

江戸の妖怪事件簿 (集英社新書)

怪異学の技法

怪異学の技法

*1:公衆衛生学的な意味ではなく狐憑きとかそういう文脈。