「日本語活用体系の変遷」(坪井美樹)

終止連体形合流、二段活用の一段化などの現象を<活用型の単純化>、<形態の示差性の実現>という観点から一連の変化として統合的に解釈するという試みはとても魅力的。

でもやっぱりこういう通時変化の要因を考えるというのは、本人もおっしゃってるように確実な論証がとても難しい。表に現れてくるのは結果だけで、しかもそれが断片的にしか残らないんだものね。

本書で強調されていた、ずさんな発音が単に定着して音便になるのではなく、音便化した形態がもとの形態とは異なる独自の役割をもつようになって初めて音便として認識されるようになる、という考え方は目から鱗。あと、通時変化はかならずしも基本形(終止形)の上で起こって他の活用形に適用されるようになるわけではない、あるいは心的辞書のエントリは終止形とはかぎらない(かなり意訳)というのも示唆的でした。

日本語活用体系の変遷

日本語活用体系の変遷