すざく不具合原因究明

去年、8月8日X線天文衛星「すざく」のX線カロリメーターを冷却していた液体ヘリウムがすべて蒸発してしまった件についての調査報告書が出たとのこと。

冷却につかう液体ヘリウムはちょっとずつ蒸発するんだけど、その排気弁と真空断熱部分(魔法瓶のようなもの)の排気弁が同じ衛星構体内にあったせいで、ヘリウム蒸発→ごくわずかに構体内にたまる→排気弁から真空断熱部にはいりこむ→断熱性がおちる→温度があがる→ヘリウム蒸発→ぐるぐる、というかんじでヘリウムがぜんぶ蒸発してしまったらしい。

完全な設計ミスなんだけど、これを事前に発見するのはそうとう運がよくないかぎりムリだったんじゃないかしら。観測装置、ヘリウム容器まわりと真空容器まわりで担当組織がちがっていて(NASAJAXA)、必要な真空度にたいする齟齬があったっていうのをさっぴいても、この不具合に気づくのはかなりむずかしそう。

宇宙空間とおなじ状態にして試験すればすぐに見つかったんだろうけど、今回のヘリウムの挙動を再現できるような装置は世界中どこにも存在しないってことだから、それもムリ。

今回の設計ミスは、実働させてみてはじめてわかる貴重な教訓を得たってことで、またひとつスキルがあがったと捉えていいんじゃないかしら。